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広さを中心とした満足度の高さが、建物の基本構造部分すらも犠牲にして成り立っているとは、住まい手にわかるわけがない。 しかし、これだけインターネットが発達した時代だからこそ、きちんとしたチェック方法を身につけることは可能である。
設備やデザインだけではなく、企業姿勢や開示情報の質と量、そして管理状況をチェックする方法を身につけていただきたい。 耐震性能の偽装が報じられたとき、仲間の工務店は一様に「ありえない」と答えた。
「ありえない」といったのは、それが企業としての自爆行為に他ならないからだ。 住宅施策において2000年は、行政が初めて消費者保護に大きく舵を切った年であった。
この年、「住宅の品質確保促進に関する法律」が施行され、基本構造部分および雨水の浸入を防止する部分に関しては、売り主、元請け施工業者の2年間の瑕疵担保保証が義務づけられた。 この品確法が施行された背景には、主に戸建て分譲住宅での欠陥問題が大きくクローズアップされたことがあった。
また、従来は瑕疵担保保証期間が2〜5年と短く、住宅取得者のリスクが高い、という矛盾からの救済法的な意味があった。 また、住まい手もこのような法律を背景として、欠陥住宅を許さないという意味から、自らのリスクを軽減するために、性能表示制度や設計事務所、施工検査を請け負う会社に工事監理を求める動きを起こし、そのような検査ビジネスが成立する時代を迎えた。

品確法の瑕疵担保保証と並ぶもうひとつの柱は、性能評価基準に基づいた、任意ではあるが住宅の性能に関しての共通のものさしである「住宅性能表示制度」であった。 基本的な建物の性能として9つの項目が設定されている。
この住宅性能表示制度には、設計段階での評価と建設段階での評価の2つの評価段階があり、設計段階での評価だけを受けることも可能である。 しかし、この制度は、建設段階までの評価を受けることに大きな意味をもたせている。
設計段階では、9つの性能を自己評価した申請図書類が、その性能に適合しているかどうかチェックされる。 そして、いわゆる欠陥住宅は施工中の手抜き等によって生じるという視点から、施工検査を第三者機関が行うという流れである。
この性能表示制度を活用することで、マンションや戸建て住宅の売買価値が担保されることが期待されているが、現実的にはまだ5年程度しか経過していないために、制度活用建築物の流通価値は不明である。 とりわけ、土地だけを担保価値とみなす金融機関の融資姿勢が変化していかなくては、どのような性能をもっていてもストックとしての価値が評価されない。
これでは住まい手は、欠陥防止ということにしか、この制度への価値を見出しにくい。 新築段階ではこの建設評価が安心の家づくりのひとつの方法となる、といったことを私たちは発言していたが、このことはとりわけ分譲住宅、分譲マンションを想定しての発言であった。
現在、マンションでの性能表示制度の活用状況は、2004年度で設計評価書交付1万9177戸、建設評価書交付6万9381戸となっている。 設計評価書の交付数でみると、同年、全国で分議されるマンションの約1・7%となっており、首都圏では3・4%が性能表示対応を行っていることがわかる。
しかし、この性能表示制度が設計図書での「耐震偽装」の防波堤にならない事態が発生した。 いわゆる二重見逃し問題である。
横浜市にある指定確認検査機関であるBは、確認申請段階で偽装を見逃しただけではなく、設計段階でも性能評価書を交付していたのである。 本来、確認申請と性能表示制度は連動しているわけではなく、個別案件として審査されるべきものである。

それを同一機関が2つの検査の仕事を行うから、どうしても基準法並みの等級申請であれば、簡単なチェックで終わらせていたとしか考えられない。 そうしたイージーな仕事ぶりが、このような事態を生んだのだろう。
今回こそ性能表示制度普及への弾みがつくと期待していた私としては、がっくりきた事件でもあった。 こうなると、指定確認検査機関と指定性能評価機関を兼ねる機関での基準法と性能表示の扱いを禁止する、というかたちにするしかないし、事実そうなると思われる。
以前、住まい手へのセミナーの講師をしていたときに、「設計事務所も施工会社も検査機関も信用できない。 どうしたらよいのか」と質問されたことがある。
住まい手が「誰も信じられない。 それでも家がほしい」ということ自体が異常だと思われた。
私の回答は「それなら建てないほうがいいです」であった。 しかし、この根底には基準法並みということが横たわっており、もし、耐震等級2としてこのマンションが申請されていたらどうだったのだろうか、ということにも留意はしておきたい。
耐震等級2や3で申請した工務店などが、何度も指定性能評価機関に呼び出されて、設計段階での計算のやり直しをさせられている現場をみたことがある私としては、そのような幻想を依然として抱いている。 なぜ、私の仲間の工務店が「ありえない」と答えたのか。
それは、品確法をチャンスとして自らの品質を徹底的に洗い出し、顧客との信頼関係を、家を建てた後の家守りまで含めてさらに濃密にしようとする工務店たちだからだ。 グ欠陥住宅μをつくったという評判だけで、商売が立ち行かなくなる。
顧客が逃げてしまうことは明瞭だからだ。 地域に根ざしている工務店にとって、「設計者の瑕疵です」とはいい訳にしかならない。
さらに、手抜き工事を行うということは、自殺行為以外の何ものでもないからだ。 そうした工務店の反応をみていると、Hなどのマンションディベロッパー、K建設などの施工業者がわざわざ偽装マンションを建てれば、それは会社を倒産に追い込むことは目に見えていたはずなのだ。
しかし、現実は自爆的な建築行為を繰り返していた。 A建築士らへの偽装依頼を通じて、である。
全国の多くの設計事務所は、代願設計が主力であったりする。 こうした事務所の現況からすれば、A氏は設計業務を委託された設計事務所、あるいはK建設のように施工会社と一体の設計事務所から「確認が通るように、図面うまくやってよ」といった依頼を受けて、「たぶんできるよ」といった軽いノリで当初は行っていたはずだ。

発覚しても、計算ミスですむと思っていたはずなのだ。 なにせ、自分には一切責任がないのだから。
このようなかたちでの偽装行為が行えるのは、完全に代願設計者的な意識でしかなかったからだろう。 要は建築確認さえとれればよく、現物の建築物がどのようなものになるかという意識は、彼のなかにはなかったはずだ。
このような代願設計者はどこにでもいるはずで、偽装マンションといういい方をするなら、その数は計り知れないといわざるをえないだろう。 そうでなくては、A氏個人で年間約却棟もの構造設計などできるわけがない。
また構造設計者は、全国でお万人の一級建築士のなかでおよそー万人といわれており、極めて少ない。 構造設計だけで食べるということは、けっこう厳しいのだ。
いずれにしても、Hなどのディベロッパー、そしてK建設などの施工会社がなぜこのような自爆行為に走ったのかは不明であるが、建築物をあまりにも甘くみすぎた。

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